青葉「嫌ですよ。有り得ないです。
あなたと結婚なんてしたくない!
でも、これが最後の親孝行だから...」

なかなか私が受け取らなかったからか
彼は近付くとそのハンカチで涙を拭いた。

律「僕は、君を好きじゃなくても
平気だけど、君は、僕を
好きじゃないと嫌なんだ。」

青葉「どうしてですか?」

律「好きでもない相手と
一緒にいるのは辛いだろう。
だから、君には僕を
好きになってもらわないと困るんだ。」

青葉「多分...無理です。でも...」

律「無理な事なんてないんだよ。
僕が君を好きにさせる。
いくらでも待つよ。だから、ゆっくり考えて。
僕との結婚の事。
突然、来てしまってごめんね。」

彼は私の手にハンカチを握らせ
曖昧に微笑んだ。

その向こう側から。
駅から続く一本道を歩く
大高の姿がぼんやりと見える。

去っていく彼と大高が
すれ違った瞬間。私はまた泣いた。

意思とは裏腹に様変わりする
現実についていくことが出来なかった。