翔馬がそんなことを考えていたなんて……それも知らなかった。ただ単に、勉強するのがイヤだから大学に行きたくないと駄々をこねているんだとばかり……


「でも、並木さんの話しを聞いて迷惑掛けずに済む方法があるって分かったからさ……」


その方法とは、社員の私も知らなかったバイオコーポレーションのある制度のことだった。


バイオコーポレーションは、研究協力をしている大学との間で人材と情報の共有をしていて、毎年、論文などの審査を経て、大学の推薦を受けた数人の学生を自社の研究所に招き、指導している。


目的は、学生個々の研究力強化を図る為。しかしそれは同時に、バイオコーポレーションが優秀な人材を早期に発掘し、確保する為の戦略。


そこで研究者としての能力が認められれば、バイオコーポレーションへの入社が確約され、更に研究生に選ばれた時点で成績優秀者扱いとなり、大学の授業料が免除されるというシステムになっているそうだ。


「選考は大学で実験、実習が行われるようになる二年次から。つまり、二年で選ばれれば、三年間の授業料は免除され払う必要はなくなる」


並木主任が卒業した大学もバイオコーポレーションと提携しているので、翔馬がその大学に入学できれば、研究生になれるよう自分が推薦状を書いてもいいと……


もちろん、ある程度のレベルに達していなければ、並木主任の推薦があっても難しいが、身内にバイオコーポレーションの社員が居るということであれば、研究生に選ばれる可能性が高くなるらしい。


「それ、本当ですか?」

「あぁ、縁故枠ってヤツだ」