それでも私はシカトし、黙々と食事を続けていた。そんな私の様子を頬杖を付き黙って眺めていた並木主任だったが、皿に残っていた最後の一口のコロッケを箸で挟み持ったのと同時に話し掛けてきた。


「――俺はお前の裸なんて見てないぞ」

「えっ?」


驚いて顔上げると並木主任がクスリと笑う。


「まさか、あんな話しを信じてブチ切れるとは思わなかったよ」


えっ? どういうこと?


「お前、自分の母親が初めて会った男に、大事な娘の裸を見せると本気で思ったのか?」


「あっ……」と声を上げた直後、箸からコロッケが滑り落ちる。


言われてみればそうだ。いくら私と並木主任が付き合っていると思っていたとしても、そんな非常識なことしないか……


「俺も面白そうだったから話しを合わせたが、お前があんな冗談を真に受けるとはな……」

「あぁぁぁ……」


バツが悪くて呆れ顔の並木主任から目を逸らしたが、一つだけ、どうしても気になることがあった。


「……でも、並木主任、私の胸、大きかったって……見てないなら、なぜ?」


そう、私は小柄なのに胸だけは大きい。中学の時、男子にからかわれて以来、それがトラウマになって常に胸が目立たない服をチョイスしてきた。


「あぁ、それは、お前が料亭で爆睡して俺がおぶって車まで連れていった時、結構ボリュームがあるモノがふたつ背中に当たってたからな。あの弾力だと、かなりデカい……違うか?」

「ぐっ……」


返答に困り下を向くも、そういうことだったのかと納得する。