――それから二時間……


私は窓際に座り、母親と翔馬が帰って来るのを今か今かと待っていた。


ふたりが帰って来たら、並木主任も居る所で私と彼は付き合っていないと声高らかに宣言するつもりだったのに、待てど暮らせどふたりは一向に帰って来ない。そしてそれに伴い、ひとつ大きな問題が浮上した。


起きてから何も食べていないから、さすがにお腹が空いてきた……


でも、一階のキッチンには並木主任が居る。ふたりっきりの時に顔を合わせるのがイヤで空腹に耐えながら部屋に籠っていたんだけど、そろそろ限界。低血糖でクラクラしてきた。


こうなったら、こっそり家を出て近所のコンビニで何か食べる物を買ってくるしかないか……


仕方なく静かに部屋を出て足音を忍ばせ階段を下りる。


自分の家なのに、どうして私がこんなにコソコソしなくちゃいけないのかと疑問に思いつつ、最後の一段を下りた時だった。目の前の居間のドアが開けっぱなしなっているのに気付き、ギョッとする。


このドアの前を突っ切って行かないと玄関には行けない。でも、テレビの音が聞こえているということは、並木主任が居間に居るということだ。


どうしようかと迷いながらソッと居間を覗くと、真正面のソファーでくつろいでいた並木主任とガッツリ目が合い慌てて顔を引っ込めたけれど、完全にアウト。居間から並木主任の「何やってんだ?」って声が聞こえてくる。


バレてしまっては仕方ない。私は堂々と居間に入り、並木主任を無視してキッチンに向かうと冷蔵庫から適当におかずを取り出して無言で食べ始めた。


するとテレビを消した並木主任が近付いて来て私の前の椅子に腰を下ろす。