自分の知らないところで、一番恥ずかしい姿を一番見られたくない人に見られてしまったという事実に衝撃を受け、暫し呆然。
そんな私の横で、並木主任が湯呑を静かにダイニングテーブルの上に置き、真顔で言う。
「お前のお母さんが居なかったら、我慢できず抱いていたかもな……」
はぁ? だっ、抱いてた?
未経験の私にとってその言葉は刺激が強過ぎて鼻の奥がツンとして危うく鼻血が出そうになる。
並木主任、本気で言ってるの?
高鳴る胸を押さえながら半信半疑で彼の顔を見つめていたが、ふと料亭で突然キスされた時のことが頭を過り、これも並木主任の冗談なのではと思えてきた。
そうか、並木主任は私のことをからかっているんだ。ここで取り乱せば、私が処女だとバレてしまう。
彼のことだ、二十七歳にもなって男性経験がないなんて知ったら、私のプライドがズタボロになるまでバカにするに決まっている。そんな屈辱耐えられない。
となると、ここは何がなんでも大人の女性を演じてそんなのへでもないと思わせないと……
「そ、そう……それは残念でしたね。でも、意識がない女性を欲望のまま抱くっていうのは、どうなんでしょう? それって完璧に犯罪ですよね」
「だな、そこで提案なんだが、今からお前の部屋に行って今度はパジャマを脱がすってのはどうだ? 意識があって同意の上なら犯罪にはならないだろ?」
「ぐっ……」
敵も然る者。やはり並木主任は私の手には負えない。