顔面蒼白で立ち尽くしていると笑顔の母親が更に私を不安にさせるようなことを言う。


「いくら姉弟でも、男の翔馬には見られたくないでしょ? でも、彼氏なら構わないわよね」


いやいや、並木主任にはもっと見られたくない……その前に、並木主任は彼氏じゃない。


二日酔いも吹っ飛び、放心しつつ並木主任に目をやれば、意味深な笑みを浮かべてお茶をすすっている。そのいやらしい笑い方でピンときた。


……見たんだ。まだ誰にも見せたことのない裸を並木主任に見られた。


勝手に勘違いした母親に怒りを覚えたが、それより裸を見られたという羞恥の方が大きくて体が燃えるように熱くなる。


いや、でもまだ全てを見られたとは限らない。これはちゃんと確かめないと……


すると母親がヨガ教室に行く時間だと言って立ち上がり、翔馬も友達と約束があるからとキッチンを出て行く。


突然並木主任とふたりっきりになり、逃げ出したいくらい気まずかったが、さっきのことを確かめる絶好のチャンス。


動揺していることを悟られないよう小さく深呼吸をして気持ちを落ち着けた後、必要以上に明るい声で訊ねてみた。


「えっと~私の着替えを手伝ってくれたそうですけど、どこまで見ました?」

「どこまでって?」

「だ、だから……下着姿とか見ちゃいました?」


心臓バクバクで並木主任を見つめると、彼はまたお茶をすすってニヤリと笑う。


「お前、なかなかいい体してるよな。小柄な割には、胸デカいし」


あぁ……やっぱ、見たんだ……