並木主任に彼女が居るって分かったら、唯、ショックを受けるだろうな……いやいや、私と並木主任がキスしたってことの方が衝撃かもしれない。
彼女のことは近い内に話すとしても、キスのことは言わない方がいいよね。
ファーストキスを経験したのに、唯に報告できないのが悲しい……
気付けば、唯と楽しそうに笑いながら話をしている並木主任を見つめ、指でソッと唇をなぞっていた。
まだ彼の唇の温もりと感触が残っている……でも、さっきのキスでも心臓が爆発しそうだったのに、その先をねだるような気持ちのいいキスってどんなキスなんだろう……
「……あっ」
私ったら、何考えてるの? もしかして、女将に止められてキスできなかったことを悔やんでるの? いや違う! それは、断じてない!
が、否定すればするほど気持ちが揺れ胸が苦しくなる。だからその苦しみを紛らわそうと無理やりひれ酒を喉に流し込んでいた。
――そして自分の限界も考えず、ひたすらひれ酒をガブ飲みしたツケがまわってきたのは、翌日、土曜日の朝……
「うぅっ……気持ち悪る~」
目を覚ますと体が鉛のように重く頭がガンガンする。見事なまでの完璧な二日酔いだ。
えっと……昨日はあれからどうしたんだったっけ?
唯の話しが止まらないからひれ酒を追加して、その後、梅酒を二杯飲んで……
必死で思い出そうとしたが、そこから先の記憶が全く無く、どうやって帰って来たのかも思い出せない。
でもまぁ、唯が家まで送ってくれたんだろうし、こうやってちゃんとパジャマに着替えて自分の部屋のベッドで寝ていたんだから、問題はないか……