こんな所でいきなり人生初のファーストキスだなんて……それも相手はまさかの並木主任……
頭の中が真っ白になり、並木主任のなすがまま身動きひとつできない。
するとそのキスは徐々に激しくなり、彼の舌が私の唇を強引に割って口内に侵入してきた。そして弄ぶように舌を絡めてくる。
「ひっ……」
初めてのキスでいきなり濃厚なディープキスを体験してしまったものだから、驚きと戸惑いで心臓が破裂しそうになる。
が、その時、背後から「並木主任と新田君じゃないか……」という声がし、今度は一気に血の気が引いていく。
あぁ……山辺部長が居たのをすっかり忘れていた。
弾かれるように振り返ると山辺部長が呆然と私達を見つめている。動転した私はプルプルと震え言葉が出てこない。
「君達……いったいこれはどういうことだね?」
そう聞かれても、正直、この状況をどう説明すればいいのかサッパリ分からない。反対に私の方が教えてほしいくらいだ。
そんな思いを込めてまだ体を密着させて離れようとしない並木主任の顔を凝視すると、彼はニッコリ笑って更に私を混乱させるようなことを言う。
「俺達は付き合っているんですよ」
へっ? 私と並木主任が付き合ってる?
「そ、それは本当なのかね?」
「はい、今日が付き合いだしてちょうど一ヶ月の記念日なんです。なのでお祝いに食事に来ていたんですが、彼女が飲み過ぎてひとりでトイレに行けないと言うもので仕方なく着いて来たところ、途中でキスをせがまれましてね、その顔が可愛くてつい……」
並木主任が余りにも突拍子もないことを言うものだから、反論するのも忘れ絶句する。