「そうだね。可愛げないよ」

「へっ?」


少しは気を使って「そんなことないよ」とか言ってくれるだろうと期待していたのに、まさかここまでバッサリ切り捨てられるとは思わなかった。


更に唯は、今気づいたのかと豪華に笑っている。でも、一頻り笑うと急に真顔になり、上目遣いで睨んできた。


「そんなことより、並木主任からヒールをプレゼントされるなんて……気に入らないなぁ~」

「ヤダ、変な誤解しないでよね。たまたまそういうことになっただけで、深い意味はないんだから」


そう、並木主任にとって私はただの助手。彼には彼女が居るんだもの。でも、その事実を唯には言えなかった。


「だったらさ、並木主任とご飯行く時、私も誘ってよ」

「えっ? 唯も?」

「並木主任と何もないなら私が一緒に行ってもなんの問題もないでしょ? 大丈夫! 心配しなくても自分の分はちゃんと払うから」


それは私にとっても好都合。正直、彼女が居ると分かった並木主任とふたりっきりで食事に行くのは気が重かった。


快く承諾すると唯は興奮気味にスマホを取り出し、レストランの検索を始める。


でも、翌日に成分分析の書類を並木主任に届け、並木主任の都合のいい日にご飯に行きましょうと伝えたのに、三日経っても音沙汰がない。


もしかして、ご飯をおごってくれと言ったのは私を納得させる為で、本当は私と食事に行くつもりなんかなかったんじゃあ……


そんなことを考えていたら、終業間近に並木主任から内線が掛かってきた。