「SAKAIとなにか直接的な関係があれば口実にもなるんだけどなぁ」

なにげなく父がぼそっと呟いた時、頭の中でひとつの案がひらめいた。

「俺が酒井の娘と婚約するっていうのはどうだ?」

すると父は目をパチクリさせてしばらくするとニッと笑った。

「おお! なるほどな」

政略結婚のようにも聞こえるかもしれないが、父にそんな抵抗は一切ない。自身の結婚もそうだったからだ。それに、俺は実際彼女を気に入っている。彼女と婚姻関係になれば、会社を買収したところで理由づけのひとつになる。

後日、その旨を酒井氏に伝えると、友好的買収に一流企業の御曹司のもとへ娘が婚約。願ったりかなったりだと酒井氏は喜んで、善は急げと言わんばかりに早速彼女の写真をパソコンのメールに添付して送ってきた。

別に、顔なんて送ってこられてももう知ってるし。うちの会社にいるんだから。