「それに、全回収の損失くらいで傾くような会社じゃないだろ? 頭の固い上層部の連中は保守的でビビッてるだけだ」

『まったく、お前も言うようになったな。私にとっては頼もしい限りだが』

それから他愛のない話をしばらく話して電話を切る。

俺が父の背中を押すような形になったが、この件に関しての結論は記載ミスのある商品の全回収ということになった。

反対意見をひとりで押し通したんだ。きっとこれから茨の道だぞ。

俺は彼女の姿を思いながら、心の中で呟いた――。