「ちょっと、どうすんのよ」

親友の帆波 芽衣子が私を小突く。

「私が知りたいよ、そんなの...」

事の顛末は数日前に遡る。
私は下校途中に道端でしゃがみこんでいる男の子を見つけた。
最初は落し物でもしたのかと思って通り過ぎようとすると、荒い息遣いが足元で聞こえた。
男の子は苦しそうに肩を上下していた。

(これはやばい...!)

そう思って声をかけると案の定、返答することもままならなかった。

「すぐに救急車を呼びますから!」

そう言って私がスマホに手を伸ばすと、その手はガシッと男の子に掴まれてしまった。

「い、いい...から...だ...じょ...だ...から...」

聞き取れるか聞き取れないかの小さな声で途切れ途切れだったけど、大丈夫だ。というのは何とか聞き取れた。

「でも...」
「い...つも...ある...か、ら」

いつもあるといっても万が一のことがあったら大変だ。私は背中をさすっても良いか聞き、男の子が微かに頷くのを確認すると、そっと触れてゆっくりとさすった。

「あの、ありがとうございました。」