反対されるのは覚悟していたため、叱責されてもラナは屈しない。

女王になりたいという願いを、頭ごなしに却下した父を、どうにかして説得しなければと懸命に話しかけた。


「もしもの話です。我が国の法律で女性の即位が認められているとしたら、お父様は、わたくしとお兄様のどちらを後継者に選ばれますか?」


父の眉間の皺は解けないが、三秒ほど考えて答えをくれる。


「それは、お前だな。女ながらに度胸と知恵がある。国政を司る能力もありそうだ。エイドリアンは、なにからなにまで足りないものだらけで、どうしたらよいのやら……」


国王の顔からは怒りが消え、その瞳は暗雲たる未来を見ているように揺れていた。

不安げな様子に、ラナの望む方へ意見を曲げてくれるのではないかと期待したが、国王は咳払いをひとつしたら、「だが、法律上不可能なんだ。お前は女だ。諦めろ」と結論を戻してしまった。


心の中で舌打ちしたラナは、これならどうよ、とばかりに別の方向から攻め始める。


「お兄様が王位についたらミトロニア王国がどうなるのか、それをわたくしなりに考えてみましたの」