中は舞踏会用のホールほども広く、テーブルと椅子がびっしりと並んでいる。

最奥に国王のための一際立派な椅子が置かれ、そこからドアまで赤絨毯が一直線に敷かれていた。


貴族や有識者たちが立ち並んでこうべを垂れる中を、「ご苦労だった」と声をかけつつ、国王がゆっくりと進み、ドアへと向かっている。

最高権力者らしい、実に威厳に満ちた顔つきの国王であったが、廊下に出てラナとばったり出くわすと、キョトンとした穏和な表情をする。

「どうした?」と声をかけた国王は、待ちくたびれた娘が頬を膨らませている様子に、なにかを思い出したようなため息をついた。


「そういえば今朝から、話があると言っておったな。それで待っていたのか。悪いが、晩餐の席でしてくれ。これから引見せねばならん。それも大事な仕事だ」


国王が謁見者の陳情を受けたり相談に乗ることは、大事な仕事に違いない。

それはラナも理解していることであるが、今日ばかりは物分かりよく引き下がることはできなかった。


「お言葉ですが」と強気な視線を正面から父にぶつけ、「謁見の来客より、わたくしの方が余程、国家にとって重大な案件を抱えております。今すぐお話をさせてください」と詰め寄った。