翌日の十五時過ぎに、ラナは邸宅内の一階、東側にある議事堂前をウロウロしていた。

女王になりたいと父に話そうとしているのだが、国王は多忙でなかなか捕まえることができずにいる。

今は、王太子のせいで頓挫してしまった灯台建設についての臨時会議中で、二時間が過ぎてもまだ終わらない。


会議に出席しているのは、国王の他に大臣の役職が与えられている位の高い貴族と、他数人の有能な貴族たち、それから有識者に、民衆を代表して王都の商工会議所の幹部もいる。

全部で二十名ほどだろうか。

定例会議の時期が来れば、国中の貴族が集まるため、出席者は二百名を超える。

ただし、議事堂内に入れるのは男性のみ。

神聖な国政会議の場に、女性は立ち入りが禁止されていた。


これまでは、それを当たり前のように思っていたラナであったが、女王になりたいと願う今は、癪に触る決まり事だとイラついていた。

大理石張りの廊下を、彼女の忙しない靴音が行ったり来たりと響いている。

議事堂の両開きのドアは革張りの重厚感あるもので、打ち込まれた金の鋲が豪華に輝いている。

ドアの向かいの壁には、国王の肖像画が飾られていて、早く出てこいという苛立ちを込めて、ラナが父の絵を睨んだら、やっと議事堂の扉が開いた。