ラナも資料は読み込んでいるので、このアダモビッチ侯爵領に入った目的が、皮膚病の調査であることは理解している。

それでもまだ、イワノフの言わんとしている意味がわからず、首を傾げて聞き返した。


「うん、そうだけど……燻製工場となんの関係が?」

「皮膚病はこの町の北側で発生しているそうじゃ。去年の夏に初めての患者が出て、現在までにその数は八十人にまで増えておると書かれておりましたな」


そこまで言われて、ラナはやっとお土産のベーコンから頭を切り離すことができた。


「そっか。工場の位置や建設された時期と、皮膚病の発生状況が一致しているのね……」

眉を寄せて深刻そうに呟くと、北へ延びる道の先を見つめ、頷いた。

「わかったわ。北側に宿を取りましょう。そこを拠点に、工場と周辺を調査するわよ」


仲間たちに指示をする彼女は、堂々として、少々偉そうな顔付きに見える。

すると、すかさずカイザーにツッコミを入れられてしまった。


「さっきまで食い物のことしか頭になかった奴が、なにかっこつけてんだよ」