だが小金沢は、今井の顔面を思いきり殴りつけた。
歯が折れて口から飛んでいく。
「きょ、きょがね、ざ_がっ‼︎」
名前を呼ぼうとした今井に、拳を振り下ろす。
名前さえ呼ばせなければいい。
返事さえすれば命が止まることはないが、そもそも元凶である今井の口を封じてしまえばいいんだ。
口を開こうとするたび、顔にパンチをお見舞いする小金沢は容赦がなかった。
見る見るうちに今井の顔が変形していく。
だが、俺は止めない。
全員が同じ思いだ。
生徒を死に追いやる担任なんて、俺たちには必要がない__。
「楠木、ナイフをくれ」
「えっ?」
「ナイフだ」
そう言って差し出される手に、俺は今井の手から引き剥がしたナイフを渡した。
もう観念したのか、今井はぐったりと抵抗もしない。
腫れ上がった目で、じっと小金沢を見上げているその目__。
どこかで、どこかで見た記憶が?
なんだか、胸騒ぎがする。
「お前は死んで当然なんだよ、くそ教師が」
両手でナイフを握って、小金沢が頭上高く持ち上げた。
このまま一気に突き刺して、この悪夢のような時間を終わらせる、いや、終わらせてほしい__。
フッと鼻息が聞こえた。
今井が、笑ったんだ。
そうだ、思い出した。
あの目は、ジャクソンが今井をずっと見つめていた目と同じ。虎視眈々と、形勢逆転を狙っている目だった__。