血飛沫(ちしぶき)が勢いよく噴き出し、今井の顔に飛ぶ。
それを避けることもなく、膝から崩れ落ちる和久井を見下ろして言った。
「僕のクラスにいじめは認めない。あってはならないんだ」
返り血を浴びたその顔は、鬼のよう。
そして鬼は、倒れゆく教え子に言葉を放つ。
「そもそも、お前が居なければ、いじめなんてなかった」
これで正真正銘【いじめ】裁判は閉廷した。
教室の中央で乱雑する四つの死体。床を埋め尽くそうとする、赤い血。鉄の匂いが充満する。
俺たちは誰も、動くことができなかった。
俺も立ち尽くしたまま、横顔を赤く塗り固められた今井を見つめて__こいつは人間じゃない。
確かに俺たちは良い生徒じゃなかったかもしれない。
でも、でもこんな残忍なこと、教師がやっていいわけがない。
このままじゃ、全員が殺される。
なんとかしないと__。
そう思うが、血に足を捉えられる。
足だけじゃなく、心までも金縛りにあったように動かなかった。
「さぁ、もうすぐチャイムが鳴るぞ」
ゆっくりと今井が振り返る。
目だけが白く浮かび上がった鬼は、笑顔を浮かべて言った。
「次の授業を__‼︎」
今井が、吹っ飛んだ。