「もう閉廷した」
裁判長は今井であり、終わったことを打ち鳴らす金槌のかわりに、ナイフの刃先から血が滴り落ちる。
だが、被害者である和久井進は「まだ不充分だ」と訴えた。
3人を死に追いやってもまだ、物足りないのだと。
「こいつら、ここにいるやつら全員、同罪だ‼︎」
1人ずつ舐めるように顔を見回し、憎しみをあらわにしていく。
「誰も助けてくれなかった。僕がいじめられるのを手を叩いて笑っていたやつもいる。僕がいじめられて、ホッとしてるやつもいる‼︎僕は、僕はお前たちの身代わりじゃない!見て見ぬ振りをしていたお前ら、全員が死刑なんだ!」
「和久井、落ち着くんだ」
俺は、優しく声を掛けた。
やり場のない怒りを、涙を流して訴える和久井に。
「先生、早くこいつらも始末してよ!」
「閉廷だ」
「先生!先生だって僕と同じ、こいつらにバカにされてたじゃないか!」
「お前と、同じ?」
今井の目が、静かに細くなった。
「そうだよ。僕と同じで、全員からいじめられてたじゃ__な___ぐっ、が、がっ‼︎」
急に言葉に詰まる和久井は、喉を抑える。
喉にすーっと赤い線が浮かび、そこから血が溢れ出す。
今井が、横一文字に喉をかっ切ったんだ。