血の海が広がっていく。
互いの息遣いだけが聞こえてくる中、小さな笑い声が聞こえてきた。
くくく。
くくくっ。
抑えられない笑い声は__急に爆発した。
「あぁっ、ああぁ‼︎可笑しい、可笑しっ、可笑しい‼︎」
腹を抱え、体をくの字に曲げて笑い転げるのは、和久井進だった。
足をふみ鳴らし、狂ったように高らかに笑ういじめられっ子は、大の字に倒れているいじめっ子に歩み寄ると、その脇腹を蹴った。
「ばーか!バーカバカバカバーカ‼︎」
もう、ジャクソンは死んでいるというのに__いや、死んでいるからこそ、何度も何度も蹴り上げる。
やり返される心配がないからだ。
顔を真っ赤にし、血で汚れるのを構いもせず、罵声を浴びせて蹴り続ける。
「おい、やめろ‼︎」
俺は力任せに、和久井を突き飛ばした。
そのまま血だまりに尻もちをつく、弱かったいじめっ子は、燃えたぎる眼差しで俺を睨み返してくる。
「ここは楠木の言う通りだ。いじめ裁判は終わった。これにて閉廷」
血が光る刃先を振り、裁判長である今井が告げる。
被害者の和久井が望む通り、加害者の3人は死刑となって死んだのだから、いじめ裁判は終わりだ。
でも__終わっていないものが1名だけいた。
「まだ、終わってない」
そう言って、和久井進が立ち上がる。