「当然でしょ!誰にも負けるつもりはないわ」

「そうですよね」


彼がそう言った後。


「……良かった」


小さくつぶやいた言葉。


良かった?

どういう意味?

違和感を感じて振り返ると、私のすぐ後ろに宇佐美くんは立っていた。


な、に?

宇佐美くんはじっとこっちを見ている。


それも、ぎらりと獲物をねらうような目で。


「結衣さん」


宇佐美くんがゆっくりと私との距離を詰める。


ーービクッ。


「ちょっと、何!?」


強気でそう言ったものの


ーー怖い。


とっさにそう思ってしまった。



「こ、来ないでよ」


本当はずっと。
怖かった。


彼のきはくも。

持ってるものも、勢いも。


全部。


怖くなって思わず、1歩下がると。


「……っ!」


ぐらっ。

後ろ足をなにかのコードに足を引っかけてしまう。


倒れる!


身体が後ろにかたむいていく瞬間。


「……っ、」


がっちりとした宇佐美くんの腕が私を支えた。


ーードキン。


「宇佐美く……」

「結衣さん」


顔をあげればすぐ目の前に彼の顔が。


「……っ!」