余裕のない顔を見られたくなくて、私はとっさに顔をそらした。


あせってる、なんて知られたくない。


だって彼は自分の呼びかけなんてすることもなく、私の後ろについている。


まるで私なんか相手にしてないみたいでくやしい。


このままじゃダメなのに。

どんどん余裕がなくなっていく。



「そりゃ緊張しますよね」


まるで他人事な言い方。


私はぐっとくちびるを噛みしめると、宇佐美くんに言った。



「宇佐美くん、髪の色。

もう少し暗くした方がいいと思うわ」


そのあせりはイライラへと変化する。


「いくら校則で許されてるとはいえ、生徒会のメンバーがそんな風だと……」


「なにイライラしてるんですか?結衣さん」


「っ、」


すっと入って来た声。

私の言葉にかぶせるように言ってくる。


「イライラって……」


「学校の校則はきちんと守っています

範囲内なんだからオッケーでしょ?

結衣さんは少しかたすぎるんですよ」


「……かたすぎるって何よ!」


私のイライラはすでにピークに達していた。

日頃の疲れとあせり。


それは感情をコントロール出来ないくらいになっていた。