中庭にある大きな木の下で、蓮が明音ちゃんとキスしているところを……。
蓮の表情は見えないけど、明音ちゃんの顔からは本気で恋をしていることが伝わってくる。
それくらい、深く熱いキスをしている。
夏美ちゃんがせっかく気を利かせて隠そうとしてくれたのに……。
それを見て傷付いている私が情けなくなる。
諦めるって決めたばっかりなのにな……。
「見ちゃったのね……大丈夫?」
私の視線に気付いた夏美ちゃんが心配そうに聞いてくる。
「大丈夫だよ!私、もう蓮のことなんて何とも思ってないし!」
そう強がって言ってみたものの、さっきの光景が目に焼き付いて離れてくれない。
まるで、それは──
『もうあの頃の蓮はいないよ』
そう改めて思い知らせるような、そんな光景にも見えた。