彩花の父は、海で仕事をしていた。
しかし、彩花が生まれてすぐ、仕事中に船が海に呑み込まれ、亡くなってしまった。
だから、彩花が写っている写真には、いつも母の姿しかない。
彩花は父を写真でしかみたことがないのだ。
「星うさぎ堂…」
願いが叶う、と聞いて、彩花は父に会ってみたいという願いが、
一瞬脳裏を過ぎったのだ。
願いが叶うなら、父に会って、話をしたい。
しかし、試練のことが頭の隅っこにあり、どうしよう、と悩んでいる。
「どうしよう」
ベッドに寝っ転がって、そう呟いた。