「どういうことですか……?」
「だから、引退ってやつ」
「まだ若いのに……」
しかも、綺麗な音を封印する。
それが私には悲しかった。
ただ、
持たせてもらってるバイオリンが
少しだけ冷たくて。
私は冬の冷たさを感じた。
「私は、言えないですけど……」
「?」
「変わるって、辛いですよ……?」
周りの友達が変わって
反応も変わっていって。
今までしていたことが
全て自分の身体に返ってきた。
怖かった。
何度も逃げたくなかった。
大切な人がいたから耐えられた。
多分この人にもいるんだろう。
けど、やっぱり辛いときもあった。
私は、辛かった。
だから、広げたくない。
「簡単に、変わるとか……悲しいこと、言わないでください。……一哉さん、ちゃんと素敵な特技を持ってるじゃないですか。そんなの、もったいないです!」
「言われても、決まったしね」
「…………」
私は、俯いた。
そうだった。
出会ったばかりなのに、こんなこと。
ただの押し付けじゃないか。
「……嬉しかったよ。あんたにそう言ってもらえたら。けどさ、やっぱりきついんだ。プレッシャーも、俺が出来る事が当然だと思ってる親たちも。もう、嫌なんだよ」
一哉さんはニコッと笑った。
でも、その笑顔は悲しげだった。