「え……?」
「近所迷惑なんだよ、ボケ」
「ボケって……っ」
涙がポロポロ零れてくる。
助けを求めてたのはこの人じゃないのに
何故か安心する自分がいる。
「気持ち悪い」
「そんなことっ、初対面ですよっ……!」
「初対面の奴の前で泣く奴もどうかと思うよ。まあ個人的な意見だけどね」
冷たいのに、ここにいる。
心配してくれたのかと思った。
優しい心の持ち主を
孤独の持ち主は分かってる。
だから、優しいくせにって
また泣けてきた。
うれし涙。
「……泣き止めって。俺の所為?」
「……違います」
「じゃあ何?」
「怖くなっちゃって……」
うずくまったまま、彼を見ていた。
綺麗な顔が月明かりに照らされて
とても綺麗だった。
涙が、
心の雨が、
少しずつ止んでいく。
「やっぱり俺の所為じゃん」
「ちがっ……」
“ぐいっ”
背の高い彼に、
私は腕を強く引かれる。
温かい体温が
冷たい私に伝わってくる。
「えっ!?」
「ほら、来いよ」
「ちょ、ちょっと!」
強引な彼。
気弱になった私。
これが、私達の始まりだった。