「あ………」

見つけたとき、思わず息が止まった。
誰もいない公園に響くバイオリンの音。
音楽の知識はなかったけど、聞き入った。
何故か、惹かれた。

「…………」

何も口にしない。
けれど、心地よい。
沈黙が美しいと思ったのは初めてだった。

「……?」

音源がこちらを向いて、私はビクついた。
彼は目をしかめて私を睨んだ。
正直、少し怖かった。

「誰?」
「いや、私は……」
「まあ、いいけど」

特に表情も変えずに
彼はまたバイオリンを弾き始める。
見た事のある顔だった。
それに、この音を聴いたことも。

「バイオリン?」
「……ビオラ。よく間違える人いるけど」

冷たい声だった。
音に相応しくないような、悲しい声。
でも、何処か見た事のある顔。

「あの、会ったことありません?」
「何?逆ナン?」

さらに顔をしかめる。
クラスの人を思い出した。

「……すいません」
「早く、向こう行って」
「……はい」

第一印象は、怖い人だった。