「普通に仕事して、恋愛して、家庭を築いて……そんな当たり前を送ってみたい」


「……白石さんは、今の生活に苦を感じてるの?」



普通に憧れる君は、隣を歩くただ普通の人間を嫌うのだろうか。


そう思うと、少しだけこの俺たちの距離感が……嫌だ。



「私はこの病気に対して、


苦を感じたことはないよ。




ただ……桐生くんに出会うまでは」




凛とした表情で、君は俺を見た。


透き通るような白い肌に、真っ赤に咲き誇るその菊の花がゆっくりと花びらを反らせていく。




「え……俺?」


「うん。桐生くんが、原因かな」


「ごめん、俺何かしちゃったかな……」


「桐生くんが謝っても、これはどうしようもない事だから」




衝撃が走っていくこの感覚に、俺は少しフラリとなるが何とか足に力を入れて留まった。


少しだけ意地悪そうなその目付きに、俺はどうしようもなく君が欲しくなる。