いつの間にか朝になっていた。

朝ご飯の後に、先生が部屋に来て
「おはようございます。昨日はよく眠れましたか?綾瀬さん、頑張っていますね。このまま順調に回復すれば退院も近いでしょう。もう少しです。一緒に1歩ずつ進んで行きましょうね。」と言ったので

「おはようございます。最近、薬のおかげか昔の普通だった頃の自分に戻ってきている気がします。夜も眠れるし、人も少しだけ大丈夫になってきました。でもまだ会話する事が出来なくて…。」と私が困った様に言うと、

先生が「大丈夫ですよ。徐々に良くなっているので安心してください。私との会話も少し増えても大丈夫ですか?」と先生がまた困ってしまう質問をしてきたので、力無く
「…はい。」と答えた。

「ありがとうございます。そう言ってくれると嬉しいです。私は男性が苦手な綾瀬さんの事を困らせてばかりで本当に申し訳ないと思うのですが、ここの病院にはあいにく男性の先生しか居なくて。なのでなるべく女性の方に相談に乗ってもらえるように配慮しているのですが……。」
私は先生の優しさに嬉しくなって「男性は今も苦手ですが、お父さんとか身近な人なら話せそうです。」と言ってしまった。

私…他の人と話すなんて苦手なのに。
言ってしまってからかなり後悔した。
でも先生は「そうですか!それは良かった。」と言って満面の笑みを私に向けてきた。
その笑顔にちょっと罪悪感があり頑張ろうとちょっと思った。



それから数日経ち、食堂へ行くのが怖くなくなった。
でもやっぱり人と自分を比べてしまって辛かった。

でも男の人が居ても気にならない程度には回復してきた。

挨拶くらいしかまだ出来てないけど、人に少し慣れてきた。