「その誰かによって創られた世界だけど、誰なのかは私にも分からないんです」



ねずみちゃんは少ししょんぼりした表情をする。



さっきも言っていたように分からない事があるっていうのはこれの事だろうか。



「それは、何の為なの?」



「それは…はっきりとしている事があるとしたら、その人は元の世界に帰る為に、あなた方を選び物語を見出させているんだと思います」



「物語?」



「そう。言ったろ、最初に俺らの属性を」



「ああ」



そういえば、なぜか私はアリスと呼ばれているけど、未だに理由は不明なままだ。



「それは単にアリスの物語に出てくる登場人物と同じ光を持っているから選ばれたんだ」



「光?」



蒼兎くんはよく分からない事を口にした。



けど、ねずみちゃんと音仲くんは理解しているかのようにうんうんと頷いていた。



「?」



(えっと、どういう事なの?)



確かに私はアリスが好きだけど、でも私の知っているアリスは世間で知れ渡っているアリスの物語ではなく、どこか不思議でどこか可笑しい世界のアリスで、その物語のアリスという人物が好きなだけだ。



正直言うと、あのアリスの世界観は何というか物騒でおこがましいものである。



実際、本来のアリスの物語を読んだ時、麺を食らってしまった。



確かに不思議で可笑しなものだけど、私が知っているアリスとは異なったものだった。



でもそれが、私にとってはアリスという認識だった。



でも、この学校にあったアリスは私の知っていたアリスと似ているけど、どこか違っていた。



複数のアリスの物語はどこから来ているのだろう。



そういえば、よく思えば疑問になっていた事が何個かあった気もする。



著者とか作者とか色々疑問になる部分があった気がした。



それに、そもそもあの絵本はお母さんがくれたものだった。