呼び出し音が耳元で鳴っていた。
出るまでの時間が、長く感じられた。

「もしもし?」

「あ、お母さん?私、朋香」

「どうしたん?久しぶりやね。なんかあったんか?」

滅多に電話をしない私が、前触れもなく電話をしたもんだから、勘のいい母は何かあると思ったらしい。

「あ、うん。今、家?」

「家やで。どうしたん?」

「あ、あのね。お父さんとお母さんに会ってもらいたい人がおるねん」

勇気を振り絞って伝えた。
少しの沈黙が、私の不安を増殖させた。

「え?紹介?何?彼氏か?」

「あ、うん。彼氏…かな。その…結婚前提なんやけど…」

電話越しにゴトッと音が聞こえた。

「もしもし?お母さん?」

「…あ、ごめんごめん。びっくりして電話落としてしもたわ。本気で言うてんの?」

さすが…お母さん。
本気でって…普通、冗談で言わないでしょ。

「ほ、本気やから!お父さんにも挨拶したいって…いつやったら空いてる?そっち連れて行くから!」

一気にまくしたてた。

「そんな、無理せんでいいのに」

必死になって伝えた返事がこれだった。

「へ?む、無理って…お母さん?」