だけど
意外にも陽向さんは冷静で。


「目が覚めたんだ。
 大丈夫か?」

「え…あ、はい…」


マジメな顔して
テンション低いまま言われたから…
この人誰だ?って思うくらい
いつもと様子が違って見えた。


「自分で歩けますよ…?」


そう言ってみたが
今度は何も反応してくれず。
アタシの顔すら見もしない。
もしかして…怒ってる?


「陽向さん…
 アタシは本当に平気。
 少し話をしたいから降ろしてくれませんか?」


だけど彼は応じようとしない。


正直、体内のアルコールは
まだ全然残ってるよ。
そんなの当たり前か。
さっきの今で抜けるはずがないモンね。

だけど
この状況は良くない気がして
しっかりしなきゃなとは思うから
寝てる場合じゃないのに。


「話をするのは今じゃなくていい。
 それよりも今はセツナの体と心を休めたい。
 女だって思ってたヤツが男だったって知って
 元々言わずに家に入ってんだ。
 怖くて当たり前だろ」


明らかに機嫌が悪い陽向さんに
コレ以上、否定をする言葉が見つからない。

言えるはずがない。