「それに今は
 吹雪さんという素敵な彼女もいますし
もう、アタシと陽向さんの事は
 お気になさらなくて大丈夫です。
 お互いしっかりと
 前を向いて歩いているので…」


愛とか恋とか
考えたくないんだよ。

ダメなんだよ…もう。
アタシには
陽向さんを好きになったり
付き合う資格なんてないんだよ。


「セツナさん…あのね?
 アナタに言わないといけない事があるの。
 …って家に転がり込んで
 お酒…まで飲ませてから言うのも、アレなんだけど…
 実は…私ね…」


吹雪さんはとても言いづらそうな様子で
言葉を選ぶように何やら考えながら
何かを言おうとしている。

そんな彼女の話を聞いているうちに
少しずつ視点が定まらなくなってきた。

どうやらさっき一気飲みしてしまったワインが
体内にまわってきたらしい。
聞かなきゃいけないって
頭じゃわかっているのに…。


だけど
そんな事に気付くはずもなく
吹雪さんは続けた。


「実はね…私…
男、なんだ」


と―――


「…え。」


酔っていても
彼女の言った言葉は
しっかり聞き取れた。

間違いであってほしかったのに。