ただ…


「あの人は…
 いつも仕事に対して誇りを持っています。
 この前も言いましたが
 仕事に関しては本当に尊敬しています。
 そしてその姿勢が憧れでもありました」


元々はそれが1番
彼を愛した理由…

そしてもう1つは…


「素直…だったし
 まっすぐ…だった。
 何に対しても
 アタシに対しても…」


『好き』だと毎日
気持ちを言葉にしてくれて
『ありがとう』と
優しく微笑んでくれて

体を重ねるときは
いつだって優しく大切にしてくれて
何度も名前を呼んで
『愛してる』って…


「何思い出してんだ…アタシ」


酒のせいで
バカみたいに昔の事を他人に話してるし。


「彼の事
 本当はとても愛しているのね?」

「…いえ
 あくまで過去の話です。
 今は違います」


今は
こうして人に話す度に
当時の事を思い出す自分がイヤになる。


再会して更に現実を思い知らされた。

彼は海外で成功させて
吹雪さんという同じ価値観を持った彼女も出来た。

それは全部
アタシと別れたから
彼の夢が叶った事。


だから陽向さんにアタシは
“不要”だ。