「あ、隆ちゃん!」
「…やっと気付いたのかよ」
安藤の方をずっと睨み付けていたけど、弥生の声がしたので、そちらの方に振り向く。
弥生は、ぶんぶんと手を振り、俺の方に笑顔を向けていた。
弥生は正真正銘俺、矢野隆太郎の彼女である。
3年生となった今は違うクラスだが、1、2年生の頃は同じクラスだった。
クラスが離れた今となって、俺の最大の悩みは、弥生が同じクラスの男子どもに密かにモテていることである。
うちの高校は大学付属だから、3年の秋だろうが関係ない。
「隆ちゃん、今日はどこでお昼食べよっか?」
「あー…」
弥生は、いつの間にか俺の目の前に来ていた。手にはしっかりと、自分のお弁当を持っている。
俺たちは、いつも中庭やら屋上やら特別教室やら、とにかく2人きりになれる所に行く。
でも、今日は…――