朝早くから沢山の人が行き交う大きな交差点まで辿り着き、信号が変わるのを待っていると、くらりと眩暈に襲われて思わず座り込んだ。



……昨日から悪寒がするとは思っていたけれど、本格的に熱が上がってきたのかもしれない。


ドリンクだけじゃなくて、風邪薬も飲んでおくんだった。

そう後悔しつつ、周りの視線が気になって立ち上がろうとすると、ポンポン、と優しく誰かに肩を叩かれた。


「あなた、大丈夫?どこか具合が……」


その優しい声に、振り向いて大丈夫です、と伝えようとすると、私が声を発するよりも早くその年配の女性が小さく驚いたような声を上げた。


「まぁ!あなたあの時の!」


え?と驚いて思わずゆっくり立ち上がると、杖を持った年配の女性は嬉しそうに私の手を握って来た。


「あれから大分経つものね。覚えていないかしら?ほら、ここの交差点で派手に転んだ私を……」


そう言って苦笑いを浮かべる女性を見て、「あ……!」と思い出し、自然と私の顔も綻んだ。


「覚えてます!花田さん、ですよね?」

「そうそう!確かあなたは夏美ちゃんよね?嬉しいわ、何年振りかしら?あの時は本当に助かったわ」


多分、花田さんと知り合ったのは三年以上前なのに、いまだに覚えていてくれた事に驚いたと同時に、嬉しさがじんわりと胸に広がった。