遥は、もう……私に見切りを付けたのかもしれない。

冬香さんが側にいる今、私に執着する意味は、もうない。



会社のデスク、キーボード横に置いている携帯をチラリと見て、毎回落ち込む自分が惨めで小さく溜息が漏れた。


これじゃ、私はただの構ってちゃんだ。


こうやって諦めにも似た気持ちを抱くクセに、まだどこかで期待している自分がいて。

そして最近は、そんなぐだぐだと悩み続ける自分が面倒で、すぐに考える事を放棄してしまうクセが付いてしまった。

でもだからといって、優香と遊びに行きたいとも思えなくて、それどころか家出している事さえ誰にも話せていない状態で、仕事が終わったら真っ直ぐ実家に帰る毎日。



───ただ、今は。
普通に毎日を過ごす事だけで心が精一杯で。


どうしたいのかも分からずに、流されるまま一日を過ごしている状態だ。

だけど、仕事があって良かったと思う。何もする事がないと、一日中遥の事を考えてしまいそうだからだ。



営業から依頼を受けた見積書を作成していると、フロアカウンターの辺りが急に騒がしくなった。

私の勤め先はグループ会社の一つの営業所なので、タワービルの十三階と十四階がオフィスフロアとなっている。

他の階は他社が入っており、特に私がいる十四階は営業部のフロアなので、フロアカウンターが部署の玄関みたいになっている為取引先の営業はみんなここに顔を出す。


……誰が来たんだろう?

そう思って椅子を少し後ろに引いて、衝立越しにカウンターの方を覗いてみる。



────ドクリ、と全身の血が騒いでいるかのように、大きく鼓動が跳ねた。


そこには、カウンター越しに数人の女性社員と会話をする遥の姿があったからだ。