遥をキッと睨み付けた。

だけど私の表情に彼は狼狽える事なく、あくまでも冷静に見つめ返してくる。

その遥の平然とした態度が、更に私に火を付けた。


「……だったら、本当の事を教えて。冬香さんに以前、遥が告白したというのは本当?」


自分でも、狡い聞き方だと思った。

“今でも彼女が好きなのか”とか、“私は冬香さんの代わりなの?”とか、直接聞きたいと思う事は山程あるけれど、今の遥の態度だと本当の事を教えてくれる気はしない。

はぐらかして、私だけだと嘘をつきそうだと思った。


……嘘。───……そう、嘘だ。


自分で思っておきながら、虚しさで胸が苦しくなる。


だけど、彼女に“告白した”と遥が認めてしまえば───。

………自ずと、他の答えも出て来る気がした。


私の質問が予想外だったのか、遥が一瞬目を大きく見開く。
そして今、初めてと言ってもいい程動揺の色を隠せていない遥が目の前にいる。

その彼の態度から、ああ、やっぱりそうなのか。と、分かっていて聞いたはずなのに、心臓をギュッと鷲掴みされたかのように苦しくなった。

それから遥が苦しげに顔を歪めて私から視線を逸らし、だけどハッキリと言葉を紡いだ。




「それは……本当」




遥の声が聞こえた一瞬だけ、全ての時間が止まってしまったかのように思えた。


───………ああ、もう、ダメだ。



遥の答えは分かっていたし、想像も出来ていたはずなのに。


実際に遥に認めてしまわれると、想像以上に衝撃が大きくて、ピンと必死に張り詰めていた最後の一本の線が、バチンッ、と音を立てて千切れてしまった気がした。