私の叫び声に、遥が驚いたように動きを止める。

悲しさや悔しさ、絶望感でいっぱいで。
目頭がぶわりと熱くなり、ぼたぼたと涙が溢れてくる。


「遥……、今日の昼間、何、してた……?」


私の涙に驚いたのか、質問の内容に驚いたのか、遥が目を見開いて私を見た。

……さぁ、なんて答えるの?

嘘だけは、絶対に許さない。
そう怒りと苦しさの気持ちを込めて、遥を見据える。

だけど彼は、少しだけ視線をさ迷わせて、また真っ直ぐに私を見た。



「……営業で、外に出てた」



その言葉が聞こえるや否や、冷静に彼と話をしようと思っていた気持ちはどこかへ吹き飛び、一気に頭に血が上る。

バンッ!!と、机を両手で思い切り叩いた。


「嘘つかないで!!冬香さんからメールが来て、二人が会っていた場所に私いたの!これでも違うって言い張るの!?」


ここまで興奮しきった私を見るのが初めてなのか、遥が驚いたように私を見たまま動けないでいる。

だけど流石に観念したのか、私から視線を逸らし、記憶を辿って何かを考えるようなそぶりを見せ、それからまた私へと視線を戻して言葉を選ぶようにゆっくりと答えた。


「……そうだね。なっちゃんの言う通り、確かに冬香と会っていた。けど、それだけだよ?」


…………それだけ?

彼女と隠れて会っていたクセに、それだけだと言ってのける遥に呆然とする。

だけど同時に、ああ、そうか。と理解した。


彼は、知らないのだ。遥が冬香さんの事を好きだという事を、私が知っているという事を。