彼女に初めて会った時から、ちらりと頭を過ぎった考え。


でもずっと、………怖くて考えないようにしていた。


遥が私に向ける愛情に、偽りを感じた事はなかったから。だから彼を信じたいと思っていた。



───だけど、今。……不安という名の疑問が、私の中でするすると解けていく。



遥が私に一目惚れだと言ったのも、冬香さんに似ていたから。

冬香さんに外国に逃げられてしまったから、冬香さんとは兄妹だから。だからきっと──、彼女に似ていた私に執着をした。

私なんて、女子校育ちで彼氏がいた経験もなく、落とすのなんて簡単だっただろう。


私は、───冬香さんの、代わりだから。


だから私を抱く時いつも、彼は『ゴメンね』と謝るのかもしれない。

結婚した今でも避妊を続けているのは、“彼女”の代わりである私との間に、きっと子供を望んでいないから。

髪を切らせないのも、“彼女”に似なくなってしまうから。

私が別れを切り出した時、遥が言った『やっと捕まえたのに』という言葉は、私じゃなくきっと“彼女”に向けたもの。


今まで胸につかえていたものが、スッと紐解かれて行く。





────最初から、遥にとって私は“彼女”の代わりでしかなかったんだ。