あの時よりも増えているファイルの数に、遥が今でもこのアルバムを更新している様子がうかがえた。



確か、ロックが掛けてあったファイルは、ファイル名が日付だけだったはず。

そう思いザッとファイル名に目を通して、あの時と同様、最新日付のファイルの横、最後尾にそのファイルはあった。


ドクドク、と心臓の音が耳にまで響いているような感覚に、指先が合わせるように震える。

それでも、ロックが掛かっているのだから、と妙な安心感にそのファイルを勢いでダブルクリックすると、案の定パスワード入力の表示が出て来た。



……やっぱり。



あれだけなんでも勝手に見ていいと言う遥が、わざわざ鍵をしてまで見られたくないモノ。


きっとこれを見てしまったら、もう元には戻れない。
そんな気がする。

だけど今の私には、見なきゃいけない、という思いと、絶対にロックを解けるという変な自信があった。

だからなのか、最後の悪足掻きというわけではないけれど、少しでも今の現実から目を背けたくて、最新日付のファイルを先にクリックしてしまった。



───中身は、やっぱり私と遥の写真で溢れていて。



ジワリ、と目に涙の膜が張って、瞬きと共にポトリと雫になって零れ落ちた。


その写真は、私の寝顔だったり、怒っている顔だったり、思い切り笑っている顔だったり。


かと思えば、なんの変哲も無い二人の並べられた靴だったり、二人で買った色違いのグラスだったり。


まだ、こんななんの変哲もない物を撮り続けているんだなぁ、なんて思うと、少し可笑しくて小さな笑みが零れた。

だけど口元は小さく弧を描いていても、涙は止まらなくて。

このまま涙が止まらなければ、泣き崩れてしまいそうだ、と必死に涙を手で拭った。