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家に帰り着いて、コートを着たままソファーに座り、バッグを抱えて深く身体を沈み込ませる。


自然と、深い溜息が漏れた。


夢なら早く覚めればいいのに……と、宙を見つめながらぼんやりと思う。



───遥は、一体これからどうしたいと思っているんだろう。



私に、離れて欲しくない、という態度を取りながら、彼は冬香さんに会いに行く。

矛盾した遥の行動に、もしかして私、キープ?なんて自虐的な思考が浮かんだ。


……そもそもなんで、こんな事になってしまったのか。

記憶をぼんやりと辿りながら、彼女と初めて会った日を思い出して、思わずハッとした。



───そういえば。



慌てて立ち上がり、膝に乗せたままだったバッグを放って寝室へと急ぐ。

寝室の棚の上に置き去りにされている自宅用の遥のノートパソコンを見つけて、プライベートなど構う事なく急いで電源を入れた。


ドク、ドク、と忙しなくなる心臓と息苦しさに、自ずと眉間に深いシワが寄る。

パソコンが起動するまでの僅かな時間がとても長く感じられて、もどかしさに唇をギュッと強く噛んだ。


……遥のパソコンを触るのは、これで二度目だ。

一度目は、付き合っている時に。
あの時の衝撃は、今でも覚えている───。


正直あの時の衝撃が大き過ぎて、あれからトラウマになってしまったかのように、遥のパソコンに触れるのが怖くなった。

だからなのか、今、冬なのに尋常じゃない汗と身体の小さな震えに、更に息苦しさを感じる。



───……だけど、そうまでしてでも、今、パソコンに触れているのは。




一つだけ………気になる事を思い出したからだ。