会社を出て、すぐに家には帰りたくなかったけれど、どこにも行く当てなんてなくて。


真っ直ぐ駅まで向かい、いつもの帰宅ラッシュに乗り慣れている私は、ガランと空いている座席に一瞬違和感を感じたけれど、すぐに今が昼過ぎだったと思い出す。

同時になんだか少しだけホッとした。
こんな時まで、人に揉まれて帰りたくはない。

ガランと空いた座席にポツンと座って、流れる景色を見つめながら、ふと目を閉じた。



──……これから、どうしよう?



二人が今“何をしているのか”なんて考えたくもなくて、そこには瞬時に蓋をする。

逃げたってどうにもならないのは分かっているけれど、今それを想像すると、自分の心が壊れてしまいそうだと思った。


……早目に二人の間に手を打たなかったツケが、今、こうして回って来たのかもしれない。


悲しくて泣きたい、というよりも、酷い虚無感で今は正直涙さえ出てこなくて。

何れにしろ、こうやって遥と話しをせざるを得ない状況にまで追い込まれたのだ。その先を想像するのは怖いけれど、今日は遥とちゃんと話さなくちゃいけない。

幸い、遥よりも早目に帰る事が出来たのだ。
言いたい事、聞きたい内容をまとめておこう、と私はバッグを握る手に力を込めて電車から降りた。