彼女の意図は、なんとなく理解した。
でも、じゃあ、私はどうする……?どうしたらいい……?

一瞬、遥に連絡しようかと思ったけれど、すぐにその考えを捨てる。

それではこの間の時と、なんら変わりがなくなる。


───遥を信じたい。


だけど、実際確かめずにはいられなくて。

……これでは、彼女の思うツボだろう。

そう思うけれど、それでも、自分の目で見て確かめたい。
遥は本当に、冬香さんに会いに行くのかもしれない。
だけど、それには何か理由があるのかもしれない。それを見極めるためにも、自分で動かないと。


そう思ったら身体は自然に動いていて、急いで自分のデスクに戻りバッグとコートを手に取ると、隣の席の同僚に外出する旨を伝えて、会社の正面玄関から飛び出すように外に出た。

タクシーをひろって、急いでTホテルに向かう。
ここからだったら、多分十五分もあれば着く。二人の約束の時間より少し早目に着くだろう。



……もし、本当に遥が来たら?


いや、多分……来る。なんとなく直感でそう思う。
そしたら、私はなんて声を掛ければいい……?

何も考えずに飛び出して来てしまったけれど、そんな修羅場的展開を今まで経験した事のない私には、何も案が浮かばない。

……ううん。違う。
案なんて必要ない。こうなったら、その瞬間に自分が思った行動を取るしかない。

ドクドク、と変な緊張でバッグを持つ手にジワリと汗をかく。

窓から流れるように過ぎ去る景色を見ながら、私はそっと息を吐き出した。