家の中に入った事で、少しだけホッとしながら玄関の電気を付けようと手を伸ばすと、それを遮るように後ろからギュッと抱きしめられた。


「……っ!」


驚いて振り返ろうとすると、抱きしめる腕の力が更にギュッと強くなる。


「……はる、か?」

「また、なっちゃんが俺から離れて行くんじゃないかって……怖くてたまらなかった」


私を抱きしめたまま、暗闇の中で遥が苦しげにポツリと言葉を漏らした。その声が震えている事に、気付かない程私も鈍感じゃない。

素直な遥の言葉に、胸がギュッと苦しくなった。


「俺に不満があるなら、なんでも聞く。だから……お願いだから、今日みたいな事は二度としないでほしい」


遥の絞り出すような掠れ声に、堪らず身を捩って遥の方を向いたけれど、暗闇の中遥の表情までは見えなくて。

だけど、私がした事に対して、自分が想像していた以上に遥が堪えている現状に、後悔の念に苛まれる。



……なんで私は、あんなバカな事をしてしまったんだろう。



遥は誰よりも、孤独を嫌う節がある。
きっと育った環境のせいなのだろうけれど、平日仕事の時は仕方ないとしても、休日は常に私のどこかに触れていないと不安だと言うくらい、私の側に居たがる彼だ。

きっとさっきまでの遥の態度は、今日の私に対する精一杯の仕返しだったのかもしれない。

それでもこうして、最後にはやっぱり本心を漏らしてくれる彼に、心の底から愛しさが募ってそっと抱きしめ返した。