「でもまぁ、やっぱ相良さんイイ男だわ。さっきのアレ、『二度とそんな事にはならないから大丈夫』とかなんとか言い出したら、正直一発殴ってやろうかと思ってたけど」


優香の言葉に驚いて目を見開くと、彼女は小さく肩を竦めて笑った。


「『努力する』って言葉、口だけ男だったらまず絶対口にしないもん。あーこの人、ちゃんと私の言葉に誠実に答えてくれてるんだなぁって凄く感じた。それに、部屋に入って夏美を見た瞬間のあの目。あれは本気で心配してたって目だった」


……驚いた。
正直あの短時間の中で、そこまで優香が遥を観察して試していたなんて、全然気付かなかった。

優香の観察眼に呆気に取られていると、肩をポンポンと軽く叩かれて、玄関へと促される。


「相良さんが夏美に接する時の態度を見ていたら、多分だけど、妹さんの事は何かしら理由があるんじゃないかなぁって私は感じるんだけど、まぁコレばっかりは本人じゃなきゃ分からないしね。二人できちんと話し合ってみな」


優香がいまだ呆気に取られている私の顔を見て「アホ面ー」と、小さく噴き出して笑った。


───“何かしら理由がある”。

優香のその言葉に、情けないけれど少しホッとして、救われたような気持ちになる。

今から遥と話す事が出来るかは分からないけれど、背中を押してもらえたような気がして、コクリと小さく頷き返して玄関から外に出た。