私が遥に直接問えていれば、こんな事にはならなかった。
だから、優香に迷惑を掛けたのは私なのに。

頭を下げる遥の後ろ姿に、自分がどれだけ子供なのかを思い知らされる。

そんな私の表情に気付いた優香が、わざと小さく溜息を吐いてリビングのドアを開けた。


「相良さん車ですか?」

「あ、はい」

「じゃあ、近くのパーキングに停めてるって事ですよね?マンションの下まで車持って来てもらえますか?そしたら、夏美連れて下まで降りるんで」


優香の言葉に、遥が少しだけホッとしたのが後ろから見ていて分かった。

すると遥がチラリと私の方を見て、少しだけ寂しそうに微笑んだ。

その表情にドキリと心臓が跳ねたけれど、彼はすぐに前を向いてリビングのドアへと向かう。

遥が少し急ぎ足で優香の隣を通り過ぎる時、「ありがとうございます」と小さく告げてそのまま玄関から出て行くと、すぐに優香がくるりと私の方へと向き直った。


「って事で、今日は一旦帰りな。また話聞いてあげるから」


優香がニッと口の端を上げて、腕組みしながらリビングのドアに寄りかかった。

その優香の態度に、私も少しホッとする。
彼女の態度には嘘を感じなくて、本当にまたここに来ても大丈夫なのだと思わせてくれるからだ。