「愚痴を聞くぐらいならいくらでも出来るけど、今の夏美はそうじゃないでしょ?愚痴を言っても、スッキリするわけじゃないでしょ。それだったら、相良さんにもちゃんと確認した上で、まだ解決しないようだったらまたここにおいでよ。その時は一緒に考えてあげるから」


優香の言葉に暫く黙って俯いていた私だけれど、小さくコクリと頷いた。

確かに……優香の言う通りだ。
遥に聞いてしまうのは、まだ怖いと思ってしまうけれど、いずれは聞かざるを得なくなる。

遅かれ早かれ、それは絶対だ。


「……うん。遥とちゃんと話してみる。だけど、なんて言って話を切り出したら……」


そう、優香に問おうとした私の声が、来訪者を告げる呼鈴の音で掻き消された。

あ、どうしよう。お客さんかな、と優香を見ると、少し眉間にシワを寄せた彼女が舌打ちをする。


「早っ。……ゴメン夏美、多分相良さんだ。さっきコーヒー淹れてる時、取り敢えず先にショートメールで住所だけ教えちゃったんだ。まさかこんなに早く来るとは思わなくて」


優香の言葉に、思わず目を見開いて固まってしまった。

もう逃げられないこの状況に、気まずさと緊張がないまぜになって冷や汗が噴き出す。

私に何度もゴメン、と言いつつ優香が玄関へと向かう姿を呆然と見送る中、心臓がバクバクと忙しなく鳴り出して、思わず胸元をギュッと握り締めた。