優香の家に来るのは初めてだけれど、彼女らしく部屋の中もサッパリしていて、なんだか少し口元が緩んだ。


「何笑ってんの?」

「あ、ううん。優香らしい部屋だなって思って。なんていうか……無駄な物が一切ない感じ」


私の言葉に優香が、荷物を置いてマフラーを外しながらプッと噴き出して笑った。


「面倒な物は一切置かない質なの。でも、私らしいって初めて言われた。大概この家に来る人は男女共に、『もうちょっと女の子らしい部屋だと思ってた』って、何故かいつも勝手に幻滅されるから」


そう話す優香は口調こそ自嘲気味だけれど、優しく目を細めて笑って言った。


その反応に、初めて遥の家を訪れた時の事を思い出す。


遥は容姿が整い過ぎているせいか、一見すると冷たいクールな印象を受ける。

だから私の偏見でしかなかったけれど、家の中も黒とかシンプルな色で統一されているんだと思っていたのだ。

だけど実際の彼の部屋は、木目調のナチュラルカラーの家具が多くて、意外過ぎてビックリした事を思い出した。

その時思わずその感想を口走った私に、遥は笑って『家の中でくらい、温かい雰囲気の物に囲まれていたいから』と、答えてくれた。


その彼の言葉を思い出して、胸がギュッと苦しくなる。

───そんな彼を、温かく家で出迎える家族になりたい、と思った記憶まで蘇って来たからだ。