優香が慌てて私を宥めようと手で制してきたけれど、一度溢れてしまった気持ちはもう止められなくて。

私は住宅街のど真ん中で、子供のように大声で泣きだした。


……こんなになりふり構わず泣いたのは、本当に子供の時以来で。


しばらく呆気に取られたように私を見ていた優香が、ハッと我に返ったように私の肩を後ろから抱いて、片手で私の口を塞いで来た。


「ゴメン夏美、私が悪かった!まさかそんなに溜まってるとは思わなくて……本当ゴメン。ここは人の目もあるから、少しだけ我慢して。私の家で思う存分泣いていいから」


優香の気遣ってくれる言葉に、また申し訳なくて涙が出てきたけれど、“迷惑掛けてゴメン”という気持ちを込めて黙ってコクリと頷く。

それからの彼女は、ずっと黙って私の背中を優しく撫でながら歩いてくれていて。

その優香の優しさにまた、涙が溢れてきて止まらなくなる。

だから彼女の家に着くまでずっと、私は声を押し殺して泣き続けた。









***

「あ、言っとくけど、ウチなんにもないよ?途中でコンビニに寄ろうと思ってたけど寄れなかったし」


優香が玄関で靴を脱ぎながら、少し肩を竦めて笑って言った。

さっきより大分落ち着いて来た私は、軽く涙を拭いながら小さく笑い返した。